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 これだけはチェックしておきたい重要アーティスト、おすすめアルバムをアルファベット別に紹介しています。

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マルシア
(Marcia 1943-)

『エウ・イ・ア・ブリザ(Eu E A Brisa)』(1968)

 50年代後半からサンパウロで歌手活動を始めたマルシア。歌唱法的にはボサノヴァ以前のサンバカンソン風ですが、このファーストはタイトル曲のジョニー・アルフの他、マルコス・ヴァーリ、ピンガヒーリョ、カルロス・リラ、トム・ジョビン、珍しい所ではシルヴィア・テリスの曲を歌っていてアレンジも良いので、ボサファンは聴いておきたいところ。彼女はこの時期バーデン・パウエルの奥さんだった人で、ピエール・バルーの映画『サラヴァ』にも出ていた歌手というと、ピンとくる人も多いのではないでしょうか。

マルコス・ヴァーリ
(Marcos Valle 1943-)

 ボサノヴァ第二世代といわれるシンガーソングライター。ブラジルが軍事政権になり音楽もボサノヴァからプロテストソングに移行していた時期、彼はそれに逆らうように「愛と微笑みと花」「太陽、塩、南」という典型的なボサノヴァのイメージを追求しました。常に心地良いサウンドを追及する姿勢が近年イギリス等のクラブシーンで支持を得ています。

『サンバ・ヂマイス(Samba Demais)』(1964)

 1964年、21歳のファースト・アルバム。もうこの時点ですでにマルコスの個性は完成しており、ファーストということが信じられないほど。ただしソングライターとしては曲が揃っていなかったのか、半分はジョビン、ジョニー・アルフ、ドゥルヴァル・フェヘイラの作品。エウミール・デオダートのアレンジも冴えまくっており、とてもリッチなサウンドを紡ぎ出しています。

『シンガー・ソングライター(O Compositor E O Cantor)』(1965)

 ファーストの約1年後に出たセカンド・アルバム。マルコス最大のヒット曲「サマー・サンバ」を含む12曲は全てオリジナル曲。卓越したソングライター・センスが炸裂しています。いまだにスタンダードと呼ばれる完成度を持ったこれらの曲を、わずか一年で作り上げた手腕は天才といって間違いないでしょう。ヴォーカリストとしてもその甘美かつクールな歌声はとても魅力的で、ボサノヴァ男性ヴォーカルの最高峰とい言い切ってしまいたいです。

『サンバ’68(Samba68)』(1968)

 タイトル通り1968年にアメリカで録音された作品。典型的ボサノヴァから少し進化したグルーヴィーなアレンジがかっこいいです(アレンジはおなじみのエウミール・デオダート)。当時の奥さんアナマリアとのデュエットも魅力的。テイ・トウワのアルバム『フューチャー・リスニング』でベベウ・ジルベルトが歌っていた「バトゥカーダ」のオリジナルヴァージョン収録。

『ヴィオラ・エンルアラーダ(Viola Enluarada)』(1968)

 政治的なテーマを避けていたマルコスも、さすがに世情には逆らえずメッセージ性の強い楽曲を収めたアルバムをリリース。ただしサウンドは攻撃的な部分はあまりなく、これまでの路線を更に昇華したような美しい旋律を持つ曲を多数収録しています。北東部のリズムを持った「ブロコ・ド・エウ・ソジーニョ」「ペラス・フアス・ド・ヘシーフィ」、純ボサノヴァの「オーメン・ド・メウ・ムンド」「オ・アモール・エ・シャーマ」などマルコスでなければ作りえない個性的かつ繊細な名曲揃い。

『ムスタンギ・コル・ヂ・サンギ(Mustang Cor De Sangue Ou Corce)』(1969)

 ビートルズと同世代でアメリカでも活動していたマルコスが、当時の欧米のロック・ポップスから影響を受けるのは当然のことで、派手なブラスセクションやオルガン、力強い歌い方が印象的な、ボサノヴァから一歩も二歩も飛び出したサウンドを持ったアルバムになっています。むろんブラジル人のアイデンティティを忘れたわけではなく、フレヴォ、トアーダ、バイヨンなどこれまで以上に多彩なブラジルのリズムを取り入れ、しっかり自分の音楽にしているところも秀逸。ソフトロックファンにもおすすめしたいポップアルバムです。

『マルコス・ヴァーリ(1970)(Marcos Valle)』(1970)

 前作、前々作で共演もしたミルトン・ナシメントをサポートしていたロック・バンド、ソン・イマジナリオが全面的に参加したアルバムで、当然音の方も更にロック色が強くなっています。アルバム最後には9分を越えるプログレ風のインスト「想像組曲」も収録。得意のジャズ・ワルツを使った「エリ・イ・エラ」「ピグマリオン」、グルーヴィーな「フレイオ・アエロヂナミコ」「オス・グリロス」等は『サンバ68』の頃のサウンドが好きなファンは必聴。

『ガーハ(Garra)』(1971)

 いかにも70年代SSWっぽい曲調の「ジェズス・メウ・ヘイ」、ストロークするアコギをフィーチャーした「コン・マイス・トリンタ」「ヴァンダ・ヴィダル」、ゴスペル風の「ブラック・イズ・ビューティフル」などの間にトム・ジョビンへのメッセージを歌った純ボサノヴァの「アオ・アミーゴ・トン」をはさんだ憎い作りのアルバム。エヴィーニャがカヴァーした超ポップナンバー「キ・バンデイラ」のかわいくリズミカルなメロディなどが光る。

『ヴェント・スル(Vento Sul)』(1972)

 現在はソロ・アーティストとしてNYで活動するヴィニシウス・カントゥアリアがドラムで参加していたバンド、オ・テルソが主にバックを務めるアルバム。冒頭からファズギターがうなるロックナンバーなのでボサノヴァファンにはオススメしにくいところですが、マルコスらしい繊細なメロディ、コードワークそしてグルーヴィーなリズムを聴ける曲ももちろんあるのでマルコスファンは聴いておきたい作品。後半はプログレ組曲風。

『プレヴィザォン・ド・テンポ(Previsao Do Tempo)』(1973)

 『天気予報』と名付けられたこの1973年の作品は、当時の マルコスが描く理想的サウンドが完璧に表現されている超傑作。アジムスの全面的バックアップによるグルーヴィーなリズム。エレピ、ハモンド、アナログシンセによるたゆたうような音像。そしてもちろんマルコスの誰にも真似の出来ない天才的なソングライティング。その全てが奇跡的化学反応を起こし、21世紀の現在聴いても全く古さを感じさせない“未来の音”を作り出しているのです。1973年といえばスティーヴィー・ワンダーの『インナーヴィジョンズ』が発表された年ですが、この『プレヴィザォン・ド・テンポ』は『インナーヴィジョンズ』と同等に語られるべき歴史的傑作なのではないでしょうか。

『マルコス・ヴァーリ(1974)(Marcos Valle)』(1974)

 実験的だった『プレヴィゾン・ド・テンポ』から一転、オーソドックスなポップアルバムをつくりあげたマルコス。エルトン・ジョン調のピアノを主体にしたメロディアスな曲群はハッピーなムードに溢れています。隣国アルゼンチンを象徴するリズム、タンゴを採り入れたその名も「Tango」は他のアルバムでは聴けない珍しい曲調。幅広くポップスファンに受け入れられそうな内容の作品です。

マリア・クレウーザ
(Maria Creuza 1944-)

『エウ・セイ・キ・ヴォウ・チ・アマール(Eu Sei Que Vou Te Amar)』(1972)

 1974年と75年の2回にわたりヤマハ世界歌謡祭に参加するため来日しているので、比較的日本では馴染みの深い女性歌手。ささやくような歌唱方法ながらアストラッド・ジルベルトのような淡々としたタイプではなく、情感を込めて歌うロマンティックお色気系。69年頃にテレビに出演しているところをヴィニシウス・ヂ・モライスに見出され、70年代前半はヴィニシウス&トッキーニョと活動を共にしました。このアルバムも彼らがフルにサポートしたもので「フェリシダーヂ」「シェガ・ヂ・サウダーヂ」そしてタイトル曲等を、歯切れの良いアレンジで聴かせます。この頃になるとヴィニシウスの歌も堂々たるものですね。

マリオ・カストロ・ネヴィス&サンバ・S.A.
(Mario Castro Neves & Samba S.A.)

『マリオ・カストロ・ネヴィス&サンバ・SA(Mario Castro Neves & Samba S.A.』(1967)

 2人の女性ヴォーカルとピアノトリオという編成から想像されるように、サウンドがセルジオ・メンデス&ブラジル66にとても似ているグループ。英語とポルトガル語を交えて歌うところもセルメン風。ピアノのマリオ・カストロ・ネヴィスは現在もアメリカで活躍するギタリスト&プロデューサーであるオスカー・カストロ・ネヴィスの兄。演奏はかなりスピーディーでタイトなジャズボサながら、ヴォーカルが非常にポップなので難しいことを考えずに楽しめます。2004年には37年ぶりのアルバム『On A Clear Bossa Day』をリリースしました。

マイーザ
(Maysa 1936-1977)

 類まれなる才能を浪費しつくしわずか41歳で亡くなった天才女性ヴォーカリスト。ブラジルでも有数の財閥の息子と結婚しながら音楽の道を選び、その地位を追われ恋多き人生を駆け抜けました。そんなゴシップはさておきこの人のヴォーカルは凄みがありすぎます。酒に溺れボロボロのステージを見せても、聴衆はブーイングすることなく拍手で許したというエピソードが示すとおり、その並外れた歌唱力、表現力をブラジル人は愛しました。人生の深淵を感じさせる重く深い歌声はボサノヴァとは少し違ったフィーリングですがぜひ聴いて欲しい素晴らしい歌手です。

『マイーザの世界へようこそ』(1957)

 ファーストとセカンドアルバムのカップリング盤、国内盤で買えます。前半8曲がファーストで全ての曲がマイーザの作曲によるもの。20歳の時の録音らしいですがこの歳にして人生の苦しみ、悲しみを表現しきっています。歌声も狂おしいほどの美しさです。

『マイーザ(Maysa)』(1963)

 エレンコからリリースされたナイトクラブ「オーボングルメ」でのライヴ盤。緩急自在の深みのあるヴォーカルは風格を感じさせます。メネスカルバンドも的確なバッキングでサポート。しっとりとした大人の世界です。アレンジ、ピアノ、オルガンは八面六臂の活躍をするデオダート。

ミウシャ
(Miucha 1937-2018)

 シコ・ブアルキのお姉さんでアストラッドの次のジョアン・ジルベルトの奥さん。(ジョアンとの間にNYで活躍中の娘べベウ・ジルベルトがいる)オリジナル・ボサノヴァ・アーティストではないのですが、本人いわく「スーパー・ボサノヴァ・マニア」だけあって、完璧にボサノヴァの雰囲気を理解した艶やかなヴォーカルは非常に心地好いです。

『ミウシャとアントニオ・カルロス・ジョビン(Miucha & Antonio Carlos Jobim)』(1977)

 題名どうりジョビンとの共演作。というよりジョビンがサポートしたミウシャのファースト・ソロ・アルバムと言うべきでしょうか。レパートリーは幅広くジョビンの「ジェット機のサンバ」を中心に弟シコ・ブアルキの曲はもちろんのこと、珍しいヴィニシウスの作曲したナンバーやジョイスのもと旦那さん、ネルソン・アンジェロの曲なども取り上げています。とにかくミウシャのハスキーで独特な声が魅力的。

 

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