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 これだけはチェックしておきたい重要アーティスト、おすすめアルバムをアルファベット別に紹介しています。

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ジョアン・ドナート
(Joao Donato 1934-2023)

 書籍『ボサノヴァの歴史』のなかで、ジョアン・ジルベルトの次くらいの頻度で取り上げられていたキーボーディスト。奇行癖はジョアンに勝るとも劣らないということ。ボサノヴァの範疇に捕らわれない様々なテイストを感じさせるサウンドを聴かせますが根っこにあるのはやはりボサノヴァ感覚。シンプルながら印象的なフレーズを持った名曲を沢山作っていて彼の作品を取り上げるアーティストも多いです。

『ムイト・ア・ヴォンターヂ(Muito a Vontade)』(1963)

 ピアノ・トリオとパーカッションのみのシンプルな作品。他のジャズボサ作品と比べるとバッキングのサウンドが控えめなのでドナートのピアノタッチの美しさを存分に楽しめます。12曲中10曲がドナートのオリジナル。ドナートのインストゥルメンタル作品を聴くならまず最初に聴きたい非常になごみ度の高い極上盤です。

『ア・ボッサ・ムイト・モデルナ(Bossa Muito Moderna De Donato)』(1963)

 前作『ムイト・ア・ヴォンターヂ』と同年に発表されたアルバムでメンバー(Dr:ミルトン・バナナ、B:チアン・ネット、Per:アマウリ・ホドリゲス)も同じ。サウンドテイストもそっくりなので『ムイト・ア・ヴォンターヂ』を気に入った人はこちらもぜひ聴くべき。もしかしたらジョビンの『タイド』と『ストーン・フラワー』のように同じ時期にいっしょに録音して2枚に分けたのかもしれませんね。そのジョビンの曲も3曲収録。ドナートのリズム感が最高に心地よいです。

『ケン・エ・ケン(Quem E Quem)』(1973)

 ヴォーカルを披露した初の作品。時代的に純粋なボサノヴァサウンドではありませんがシロウトっぽい歌い方が実にボサノヴァ的。後にガル・コスタが歌いスタンダードとなった「アテ・ケン・サービ」もドナート自身の歌で聴けます。アシスタント・プロデューサーはマルコス・ヴァーリ。

ジョアン・ジルベルト
(Joao Gilberto 1931-2019)

 とにかく彼のギターとヴォーカルを聴くことがボサノヴァを理解する早道です。一聴するとなにげなく弾き語っているようでいて、緻密に構成された演奏は多くのフォロワーを生み出しました。そうとうの変わり者でもあるのは書籍『ボサノヴァの歴史』を読めばわかります。とにかくボサノヴァを聴くならまずジョアンからどうぞ。

ジョアン・ジルベルトの伝説 』(1959〜1961)

 この作品が現在廃盤なのは非常に残念。初期のジョアンの3枚のアルバムからの曲が38曲ぎっしりつまっています。ほとんどの曲が2分前後で無駄な部分は極力そぎおとしているにかかわらず、何度聴いても新しい発見がある恐ろしい完成度を持った曲の数々をなんとか手に入れてチェックしてください。

『ゲッツ・ジルベルト(Getz/Gilberto)』(1964)

 上記の「伝説」盤が廃盤で入手しにくいのでまずはこれを聴いてみてください。ただしこれはあくまでボサノヴァの代表曲を演奏するジョアンや、ジョビンらのバッキングミュージシャンの妙を中心に聴くべきでバカでかい音のゲッツのソロは二の次です。アストラッド・ジルベルトの歌う「イパネマの娘」はここに入っています。

『彼女はカリオカ(Em Mexico)』(1970)

 ジョアンのギター・スタイルを解析してみると、これ以前のものと、ここから以降現在までとは明らかに変わっています。スピードの遅い曲では顕著に違いは無いのですが、速い曲ではよりサンバ的な奏法になっています。メキシコで録音された非常に「なごみ」度が高い人気盤です。

『三月の水(Joao Giberto)』(1973)

 ジョアン・ジルベルトの特異性がもっとも現れたアルバム。ひたすら6分半ウンデュ〜と歌い続ける自作「Undiu」をはじめとして全体が他のジョアンのアルバムに無い静かなる狂気を感じさせます。ラスト曲「イザウラ」で当時の奥さんミウシャとデュエットする以外は歌とギターと少しのパーカッションのみ。よくこれをメジャーのポリグラムが出したなぁと驚くほどの異色作ですがジョアンファンは必聴の作品といえるでしょう。

スタン・ゲッツ『ゲッツ・ジルベルト・アゲイン(The Best Of Two Worlds )』(1976)

 音のでかいスタン・ゲッツとの共演を嫌がっていたジョアンなのになぜかまた奥さん(この時はミウシャ)と共に参加した異色盤。ミウシャが英語で歌っているところも『ゲッツ/ジルベルト』の再現をねらっているのでしょうか。いきなり一曲目のギターはジョアンではなくオスカー・カストロ・ネヴィスで、リズム隊もあまりブラジルっぽくない、というと聴く気がなくなる人もいるかもしれませんが、このアルバムで聴けるジョビンの名曲「リジア」等は他のヴァージョンにない魅力があるのでやはりファンはチェックすべきでしょう。

『アモローゾ(Amoroso)』(1977)

 このアルバムはジョアンのアルバムの中で最も一般リスナーにとっつきやすいサウンドを持っています。それもそのはず、プロデュースはA&Mの数々の名盤を手がけたトミー・リピューマと後期のビル・エヴァンスを支え続けたヘレン・キーン女史の2人で、ゴージャスなオーケストレーションはジョビンからも信頼を得ていたクラウス・オガーマンなのですから。イタリア語の愛奏曲「エスターテ」や「ウェイヴ」「十字路」「トリスチ」というジョビン3連発など心地よさの極み。声とギターだけのジョアンとはまた違った魅力を放つアルバムです。

『アコースティック・ライヴ〜あなたを愛してしまう〜(Joao Gilberto Prado Pereira De Oliveira)』(1980)

 18年間の海外生活からブラジルに戻ったジョアンを歓迎して行われたコンサートを収録したアルバム。ゲストに招かれた当時14歳の娘ベベウの歌う「シェガ・ヂ・サウダーヂ」の歌声がとてもかわいいです。もう一人のゲスト、ヒタ・リーとのデュエットではなんとジョアンがハンドマイクで歌っています。このコンサートはグローボというTVネットワークが企画したもので、その映像が残っているためこういうことがわかるのですがぜひDVD化してほしいものですね。生オーケストラがリアルタイムで伴奏しているのも他のライヴでは聴けないチェックポイント。

『海の奇跡(Brasil-Joao Gilberto,Caetano Veloso E Gilbeto Gil)』(1981)

 同郷バイーア出身のカエターノ・ヴェローゾとジルベルト・ジルがジョアンといっしょに歌う企画もの的アルバム(6曲なのでミニアルバム?)。1曲のみマリア・ベターニアも参加。オーケストレーション等があとからオーバーダビングされていますが基本的にはジョアンのギターが全体のグルーヴを形作っています。ジョアンの歌唱方が後輩達に多大な影響を与えているのがよくわかる作品。

『ライヴ・イン・モントルー(Live in Montreux)』(1986)

 ギター一本の弾き語りスタイルのライヴをとらえた初めての作品で、演奏、録音共にコンディションが良く、ジョアンの弾き語りを研究する者なら必聴のアルバムといえるでしょう。「イパネマの娘」「フェリシダーヂ」などのボサノヴァ有名曲の良さはもとより、ジェラルド・ペレイラ、アリ・バホーゾらの古いサンバ曲のノリがとても良く彼のルーツがサンバだということを思い知らされます。

『ジョアン(Joao)』(1991)

 現時点(2005年)でギター以外の伴奏が施された最後の音源。いわゆるボサノヴァのスタンダードは1曲も含まれていないうえ英語、イタリア語、フランス語の曲までを演奏。とはいうものの全て完全にジョアンテイストになっていて奇をてらった印象はありません。アメリカ人ピアニスト、クレア・フィッシャーによるオーケストレーションアレンジはジョアンの弾き語りに後からオーバーダビングされたもので、古き良き時代の空気感がありとても心地よいです。

『エウ・セイ・キ・ヴォウ・チ・アマール(Ao Vivo: Eu Sei Que Vou Te Amar)』(1994)

 1994年4月13日サンパウロでのライヴ録音。テレビ番組用のライヴだったこともあって曲間にインタビューの断片が唐突に出てきたりしてちょっとイレギュラーな印象。アルバムタイトル曲等は珍しい録音で聴き所はあるものの、調子の良いライヴ録音が他に色々リリースされた今となってはコレクター向けという感も少しあり。

『ジョアン 声とギター(Joao Voz E Vialao)』(2000)

 タイトルの『声とギター』があらわしているように全曲完全弾き語りでの初めてのスタジオ録音盤。このほとんどなにもしていないようでいて、それまで誰もやらなかった画期的コンセプトによるプロデュースはカエターノ・ヴェローゾ。音質もノンリヴァーヴのため、本当にジョアンが目の前で弾いているかのような生々しい音です。

ジョニー・アルフ
(Johnny Alf 1929-2010)

 ジョニー・アルフはピアノ弾語りスタイルのシンガーソングライター。ボサノヴァが生まれる前のリオのナイトクラブで彼が革新的な演奏をしているのを、後にボサノヴァを作る若者たちがこぞって見に行ったということ。彼の作った「エウ・イ・ア・ブリザ」「イルザォン・ア・トア」「ウ・キ・エ・アマール」「セウ・イ・マール」「ハパス・ヂ・ベン」などの曲は多くのボサノヴァアーティストが演奏しています。

『ハパス・ヂ・ベン(Rapaz De Bem )』(1961)

 ボサノヴァが生まれる以前から活動していたアルフの遅すぎたファースト・アルバム。「ハパス・ヂ・ベン」「ウ・キ・エ・アマール」「イルザォン・ア・トーア」などの代表曲を収録。全編で味わい深いヴォーカルを聴かせます。バッキング的には『ゲッツ/ジルベルト』等と比べると少し古い、サンバカンソンを感じさせるスタイルを含むもののこれはこれで心地よい作品。

ジョンゴ・トリオ
(Jongo Trio)

『ジョンゴ・トリオ(Jongo Trio)』(1965)

 演奏しながらコーラスを聴かせるピアノ・トリオではタンバ・トリオが有名ですが、このジョンゴ・トリオも同じタイプのグループ。ジャズ・ボサは演奏だけ、もしくはコーラスだけでも難易度が高いのに、とびきりグルーヴィーな演奏をしながら複雑なコーラスができるなんて魔法のよう。ちなみに彼らはエリス・ヘジーナとジャイール・ホドリゲスの大ヒットアルバム『Dois Na Bossa』のバックを務めたことでも有名で、このアルバムにも「オレンジ売りの少年」等のエリスのレパートリーが含まれています。

ジョルジ・ベン
(Jorge Ben 1942)

 セルジオ・メンデスが大ヒットさせた「マシュケナダ」の作者。現在もブラジルの聴衆に絶大な人気を誇っていて若年層までもファンに取り込み続けています。なんといっても独特のファンキーなねちっこい歌い方が魅力。洗練されたボサノヴァばかり聴いた後にはこのアーシーな歌い方が新鮮に聴こえます。

『サンバ・エスケーマ・ノーヴォ(Samba Esquema Novo)』(1963)

 ボサノヴァ・ファンが聴くべきジョルジ・ベンの作品はずばりこのファーストアルバム。ちょっとでもブラジル音楽を聴いたことのある人なら知っているメロディのオンパレード。セルメンで有名な「マシュケナダ」「ショーヴィ・シューヴァ」、マリーザ・モンチもカヴァーした「バランサ・ペーナ」等いい曲がいっぱいで、これがファーストとは信じがたい高密度。サウンドも70年代以降のサンバ・ソウルではなくまさにボサノヴァ。

 

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